Vol.07

『令和5年度 税制改正大綱による電子帳簿保存法への影響』

2022.12.18

①はじめに

2022年12月16日に、自民・公明両党は与党の令和5年(2023年)度 税制改正大綱をまとめ、承認しました。
自民党のHPにて、即日公開されています。令和5年度与党税制改正大綱

NISAの拡充・恒久化や、防衛費増の財源で話題になっていますが、電子帳簿保存法についての影響はどうなったのでしょうか?
1年前を振り返ると、2022年1月1日の電子帳簿保存法改正の施行に対して、2年の宥恕措置が急遽決まるなど大きな影響がありました。
今回も、どちらかというとデジタル化推進には後ろ向きな内容となっています。
電子取引の電子データ保存、スキャナ保存、電子帳簿の順に、影響を見ていきましょう。(こちらは売上高の条件なしで全体が対象。)

②電子取引の電データ保存への影響

まずは、恒久的な対応です。

① 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件について、次の措置を講ずる。
 イ 保存義務者が国税庁等の当該職員の質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合には検索要件の全てを不要とする措置について、対象者を次のとおりとする。
  (イ)その判定期間における売上高が5,000万円以下(現行:1,000万円以下)である保存義務者
  (ロ)その電磁的記録の出力画面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている保存義務者
 ロ 電磁的記録の保存を行う者等に関する情報の確認要件を廃止する。

売上高(課税売上高でない点に注意)が、5,000万円以下の場合には、紙に印刷して保存することを併用すれば、検索要件に対応不要という事です。
また、誰が保存したかの情報を記録する必要もなくなりましたので、とにかくどこかにまとめて保存しておき、税務調査の際に渡せるようになっていれば認められるという事です。

次に、猶予措置です。
② 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由がある保存義務者に対する猶予措置として、申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについて相当の理由があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求め及び当該電磁的記録の出力画面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする。

前半を要約すると、『期限を設けず、対応が間に合わなくても猶予する』という事です。
その場合には、
・税務調査の際に、電子データを渡せる状態で保存している事
・紙にも印刷して、印刷したものをこれまでと同様に保存している事
を満たせば良いという事です。
期限を設けておらず、理由も限定していないので、実質的には保存要件にも検索要件にも対応不要という事になります。
電子帳簿保存法による、各種帳票のペーパレス化の推進は、大きく後退することになりそうです。

③スキャナ保存への影響

スキャナ保存は、さらなる緩和がなされます。

(2) 国税関係書類に係るスキャナ保存制度について、次の見直しを行う。
① 国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度、諧調及び大きなに関する情報の保存要件を廃止する。
② 国税関係書類に係る記録事項の入力者等に関する情報の確認要件を廃止する。
③ 相互関連性要件について、国税関係書類に関する国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくとされる書類を、契約書・領収書等の重要書類に限定する。

かなり緩和されました。しかし、まだいくつかの要件が残っています。

・入力期間が、最大2か月+概ね7日以内
この最大のハードルは、入力期限内かどうかをチェックできる仕組みが必要な点です。専用システムを入れないと実現が難しいことの1つです。

・真実性の確保
当然と言えば当然ですが、タイプスタンプや、改竄防止のシステムが必要です。
スキャナ保存後は、原本の紙書類を破棄して良いという法令なので仕方がないのですが、単純に保存だけすれば良いというわけではない点が、導入のハードルとなります。

この緩和は、2024年1月1日以降での対応となります。
当社の「SATSAVE(サットセーブ)」は、現時点ではスキャナ保存には対応していませんが、2024年1月1日に合わせて入力期限内かどうかをチェックする機能を追加し、無料で使い続けられるシステムとしてスキャナ保存にも対応できるようにする予定です。

④優良な電子帳簿の範囲の明確化

青色申告の65万円控除の条件でもある、「優良な電子帳簿」について、以下のように定められました。

(1) 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度について、一定の国税関係帳簿に係る電磁的記録の保存等が、国税の納税義務の適正な履行に資するものとして一定の要件等を満たしている場合におけるその国税関係帳簿(以下「優良な電子帳簿」という。)に係る過少申告加算税の軽減処置の対象となる申告所得税及び法人税に係る優良な電子帳簿の範囲を次のとおりとする。
仕訳帳
総勘定元帳
次に掲げる事項(申告所得税に係る優良な電子帳簿にあっては、ニに掲げる事項を除く。)の記載に係る上記①及び②以外の帳簿
手形(融通手形を除く。)上の債権債務に関する事項
売掛金(未収加工料その他売掛金と同様の性質を有するものを含む。)その他債権に関する事項(当座預金の預け入れ及び引出しに関する事項を除く。)
買掛金(未払加工料その他買掛金と同様の性質を有するものを含む。)その他債務に関する事項
有価証券(商品であるものを除く。)に関する事項
減価償却資産に関する事項
繰延資産に関する事項
売上げ(加工その他の役務の給付その他売上げと同様の性質を有するもの等を含む。)その他収入に関する事項
仕入れその他経費又は費用(法人税に係る優良な電子帳簿にあっては、賃金、給与手当、法定福利費及び厚生費を除く。)に関する事項

⑤まとめ

残念ながら電子取引の電子データ保存については、デジタル化の推進が少し後退しそうです。
現状の、電子帳簿保存法への理解の浸透不足や、結果的に先に施行されることとなったインボイス制度(適格請求書等保存方式)の対応で混乱することが予想される事などから、やむを得ないという判断だと思われます。
また少し余裕ができましたので、できるところから、少しずつ、確実に対応していくことになると思います。
当社の「SATSAVE(サットセーブ)」は、無料からはじめられますし、インボイス制度にも対応予定ですし、2024年からはスキャナ保存にも対応予定です。
ぜひ、この機会に、無料プランからはじめてみてはいかがでしょうか。