Column.06

『インボイス制度施行後の利益(負担増)シミュレーション、12パターン』

2022.04.22更新 (2022.04.04)

はじめに

2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が施行されます。
施行にあたって、個人事業主を中心に免税事業者、および、免税事業者に発注する課税事業者への負担増について大きな話題となっています。

いろいろと情報が錯綜していますので、対応パターンを整理し、どれぐらいの負担増となるのかシミュレーションしてみます。
2022.04.13 おまけ:現状+2つの比較機能追加
2022.04.14 「B 発注元と支払先で分担」を、-+で支払額変更可能な機能追加

免税事業者の対応パターン

インボイス制度の詳しい内容や、免税事業者の条件などは、国税庁のサイトに詳しく掲載されていますので省略します。
ここでは、免税事業者のままとするのか、登録して課税事業者に変更するのか。制度施行に当たって発生する負担を、発注元と支払先のどちらが、どれくらい負担するのかを、以下のパターンに分けて考えてみます。

 ① 支払先は免税事業者のまま、2023年10月から3年間
 ② 支払先は免税事業者のまま、2026年10月から3年間
 ③ 支払先は免税事業者のまま、2029年10月以降
 ④ 支払先は申請を行い、課税事業者となるパターン

仕入税額控除についての経過処置があるため、①~③の3パターンにわけています。
それぞれのパターンで、さらに3パターンに分けます。

 A 発注元の利益を維持するパターン
 B 発注元と支払先で負担を分け合うパターン
 C 支払先の利益を維持するパターン

全部で4×3の12パターンです。
さらにそれぞれの中間パターンもありますし、課税事業者の場合は本則課税と簡易課税があり、簡易課税はみなし仕入率が業種ごとに異なります。
また、課税事業者になった場合は消費税を納税する点だけが変わるわけでは無く、消費税の納税額分の課税所得が減るので、所得税や住民税がわずかですが少なくなります。
所得税率は課税所得額によっても異なるため、さらに計算は複雑になります。

<シミュレーション条件>
・発注元は、課税事業者で本則課税
・支払先は、現在免税事業者
・支払先は、課税事業者を選択した場合は、簡易課税を選択するものとする
・支払先の簡易課税時のみなし仕入率は、 とする ※3年間の2割特例は、「80%:第二種事業」を選択すると同じ結果となります
・支払先の所得税率は、 とし、課税事業者となった場合も変わらないものとする
・支払先の住民税率は、 とする

現状
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 100万円
 
支払 万円
仕入税額控除 60万円
 
発注元利益 400万円
発注元消費税納税額 40万円
 
支払先消費税納税額 0万円
では、パターン毎に見ていきましょう。 →おまけの比較にジャンプ

① 支払先は免税事業者のまま、2023年10月から3年間

A 発注元の利益を維持
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
B 発注元と支払先で分担
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
C 支払先の利益を維持
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円

支払額を減額して、発注元と支払先の利益を調整しています。
免税事業者のままであることを選択した場合は、A~Cの間のどこかで折り合う事になると思われます。
支払先が免税事業者のままでも仕入税額控除は80%認められますので、支払額の概ね2%程度の影響に留まります。

② 支払先は免税事業者のまま、2026年10月から3年間

A 発注元の利益を維持
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
B 発注元と支払先で分担
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
C 支払先の利益を維持
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
インボイス制度施行3年後の2026年10月以降は、適格請求書(インボイス)が無い場合の仕入税額控除は50%分しか認められません
このタイミングで、免税事業者から課税事業者への転換が進むと思われます。

③ 支払先は免税事業者のまま、2029年10月以降

A 発注元の利益を維持
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
B 発注元と支払先で分担
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
C 支払先の利益を維持
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
支払先が免税事業者の場合は仕入税額控除がまったく認められません。
発注元としては適格請求書(インボイス)を発行できない免税事業者への発注は、それに見合うメリットが無いと難しくなってくるでしょう。

④ 支払先は申請を行い、課税事業者となるパターン

A 発注元の利益を維持
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円(税込)
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
B 発注元と支払先で分担
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円(税込)
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
C 支払先の利益を維持
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円(税込)
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
免税事業者から課税事業者に転換し、適格請求書(インボイス)を発行する場合のパターンです。
発注元も、支払先も消費税を納税する事になります。
2026年10月以降は、多くの免税事業者が申請して課税事業者に転換し、このパターンを選択すると思われます。

支払額については、免税事業者の時の同額のAから、支払先の増税額分を値上げしたCの間のどこかで折り合う事になると思われます。

おわりに

数値を色々変えると、発注元売上に関係なく支払額によって負担額(利益の減額)が変わることがわかります。
ただし、もとの発注元の利益率が少ない場合は、パターンによっては発注元利益がマイナスになり、そのパターンを選択する事は不可能となります。

現実的な選択肢としては、2023年10月からの3年間は経過処置を利用し、発注元と支払先とでよく話をして新しい発注額を決める事だと思います。
2026年10月からは支払先は申請して課税事業者となり、消費税の納税を行うとともに、その間に新しい価格の交渉をするのが良いと思います。

2022年1月からは電子帳簿保存法が改正されペーパレス化が進んでいます。インボイス制度の施行を機会に、さらにペーパレス化が進むと思われます。日本版Peppolによる電子インボイスも開始されることでしょう。
SATSAVEは、無料プランから使い始めることができ、電子インボイスにも対応予定です。

2022.04.13 おまけ:現状+2つの比較機能追加

変更履歴:
・2022.04.04:公開
・2022.04.05:①②の精度向上
・2022.04.13:④の計算間違い修正、精度向上
・2022.04.13:おまけ:現状+2つの比較機能追加
・2022.04.14:「B 発注元と支払先で分担」を、-+で支払額変更可能な機能追加
・2022.04.22:①②③の支払収入減に伴う、所得税・住民税の減を反映

今後の予定:
①②の計算精度向上 2022.04.05対応
④の計算精度向上 2022.04.13対応
①②③の支払収入減に伴う、所得税・住民税の減を反映 2022.04.22対応

おまけ:現状+2つの比較

現状
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
 
 
支払先消費税納税額 万円
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円(税込)
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
発注元売上 万円(税込)
 内消費税 万円
 
支払 万円(税込)
仕入税額控除 万円
 
発注元利益 万円
発注元消費税納税額 万円
発注元利益差分 万円
 
支払先消費税納税額 万円
支払先所得税等増減 万円
支払先利益差分 万円
現状と、任意の2パターンを選んで比較してください。
シミュレーション条件設定に戻る